腎不全

腎臓の役割とは

腎臓は腰上部の背側に左右に2個あるこぶし大のそら豆の形をした臓器です。(図1)血液を濾過して血液中のいらなくなったもの(老廃物、代謝産物)や余分な水分を尿として体外に排泄して、体内の水分量やミネラルそしてpHの状態を一定に保つ役割を行っています。

その他にも、赤血球の産生を促進するホルモン(エリスロポエチン)、そして血圧を調整するホルモン(レニン)の産生、ビタミンDを活性化して体内のカルシウムバランスの調整するホルモン機能の役割もあります。

腎臓の働き
体内の老廃物・毒素を除去する
体内の水分、塩分のバランスを一定に保つ
血圧をコントロールする
血液をつくるホルモンを分泌する
ビタミンDを活性化して骨の健康を維持する

 

症状

なんらかの原因で腎臓の機能が十分に働かなくなった状態のことを腎不全といいます。腎不全は血液中の老廃物、代謝産物が排泄できなくなり、倦怠感、吐き気や嘔吐などの症状に加え、余分な水分が体に貯まり、浮腫(むくみ)、さらに肺に水が貯まると息苦しさを感じることになります。(尿毒症症状)

また、腎臓のホルモン機能が障害されると貧血や高血圧、そしてカルシウムバランスの低下により骨量が低下してきます。

 

腎不全の分類

腎不全は腎機能症障害が進行する期間によって、急激に症状が進行する「急性腎不全」と、徐々に腎機能低下が進む「慢性腎不全」があります。割合としては圧倒的に慢性腎不全が多くなっています。

1)急性腎不全は、その原因によってさらに「腎前性腎不全」、「腎性腎不全」、「腎後性腎不全」の3種類に分類(表1)され、その原因を確かめ、適切な治療をすると腎機能が回復する可能性があります。

急性腎不全の分類 原  因
 腎前性 脱水、ショック、重症感染症
 腎 性 各種薬剤、激しい運動による全身の筋肉の挫滅
 腎後性 結石、腫瘍等による尿路の通過障害(主として泌尿器科疾患)

 

2)慢性腎不全は、慢性糸球体腎炎、糖尿病、腎硬化症(高血圧が原因)など内科的慢性疾患が原因である事が多く、腎機能障害を防ぐための長期的な内科管理が必要です。適切な管理で腎機能障害を予防することが出来ますが、いったん慢性腎不全の状態になると回復の見込みはありません。

 

検査

腎不全の診断には、各種の血液検査や尿検査、そして超音波検査やCT検査などの画像検査が行われることがあります。

また、内科的な腎疾患を診断するために、腎臓に針を刺して組織を採取し、顕微鏡で腎臓の組織の状態を確認する腎生検が行われることもあります。

 

治療

1)急性腎不全

急性腎不全の中で「腎後性腎不全」の治療を泌尿器科が行います。その原因は尿管結石や前立腺肥大症の他、悪性腫瘍による尿管や尿道などの尿の通路の閉塞により発症します。尿管の閉塞を解除するために尿管ステントの留置や腎瘻造設といった手術治療、尿道の閉塞に対しては尿道カテーテルの留置や膀胱瘻造設などを行い、尿の通路を確保します。

 

2)慢性腎不全

慢性腎不全の治療法は、機能不全に陥った腎臓の代わりになる治療、『腎代替療法』として血液透析・腹膜透析と腎移植があります。主治医とよく相談され、適切な腎代替療法を選択して頂くことが重要です。

①血液透析

血液をいったん体外に導出し、透析装置によって水分と老廃物を除去した後、再び血液を体内に戻す治療です。週に3回、1回約4時間を透析センターまたはクリニックに通院して行います。

血液透析を行うためには血液が出入りするための血管を確保する必要があります。腕の動脈と静脈をつなぐ手術(内シャント)を行い腕表面の血管を太くして、その血管に針を刺して透析を行います。


②腹膜透析

腹腔内(お腹の中)にチューブを留置し、そこから透析液を注入し、腹膜といわれるお腹の中の膜を介して水分と老廃物を除去する方法です。透析液を1日4回交換しますが、患者さん本人またはご家族が自宅で行うことができます。

③腎移植

腎移植とは腎臓の機能が低下した人のために、新しい腎臓を手術で移植することによって腎臓の機能を回復させる治療法です。腎移植には、亡くなった方からいただく献腎移植とご家族からいただく生体腎移植があります。以前に比べ、生着率も改善しております。

徳洲会グループでは湘南鎌倉病院で腎移植を行っています。

 

予後

急性腎不全は、その原因を確かめ、適切な治療をすると腎機能が回復する可能性もあります。

特に、腎後性腎不全の場合は尿の通路を妨げる、尿路結石、前立腺肥大症などに対する泌尿器科的な処置・手術で尿の通路を開放する事によって、治癒する場合があります。
慢性腎不全については、血液透析および腹膜透析で生命を維持する事ができますが、根本的治療としては、腎移植手術のみとなります。

 

参考資料

・腎不全-治療選択とその実際-2023版