精巣がん(精巣腫瘍)

精巣がんとは

精巣は陰嚢(いんのう)内に収まっている、精子や男性ホルモンを産生する男性生殖器です。精巣がんは精巣内の胚(はい)細胞から発生する10万人に1人程度の比較的まれな癌ですが、15~35歳の男性に発生する癌のなかでは最も頻度の高い悪性腫瘍です。精巣がんになりやすいリスク因子として停留精巣(ていりゅうせいそう:精巣が陰嚢内に収まっていない状態)や対側の精巣がんの既往・家族歴などがあります。

図1

症状

主な症状は痛みを伴わない陰嚢の腫大です。進行した精巣がんでは後腹膜(こうふくまく)リンパ節転移による腰痛や肺転移による呼吸苦・血痰、脳転移による麻痺症状などの他、ホルモン異常による女性化乳房などが現れる可能性があります。

 

検査・診断

①精巣は体表から触れる臓器のため、まずは触診にて硬いしこりが触知されます。

②エコー; 精巣内部での癌の大きさ・拡がり・血流の状態などを確認します。

③腫瘍マーカー(LDH・AFP・HCG); 診断・治療効果の判定・再発チェックのために繰り返し測定します。

④画像検査; 転移の有無を確認するため、診断時さらに再発チェック時に全身のCTやPETを行います。

⑤精巣高位摘除術; 精巣がんが強く疑われる場合、出来るだけ速やかに(当日または数日以内)ソケイ部を切開して精巣を摘除し、病理検査にて組織型・周囲やリンパ管への広がりの有無を診断します。(図2)

図2

 

治療

前組織型や進行度、腫瘍マーカーの値、リスク分類などを踏まえて病期に応じた治療を行います。(図3、図4)

図3

①セミノーマ

早期であれば精巣摘除術後に経過観察となりますが、再発予防として放射線治療や化学療法を行うこともあります。転移していた場合、放射線治療や化学療法を行います。

②非セミノーマ

早期でも脈管侵襲(みゃっかんしんしゅう)が認められた場合、再発予防として化学療法を3~4コース行います。転移していた場合、転移巣が消失し腫瘍マーカーが正常化するまで化学療法を行います。

化学療法はスケジュールを守ってしっかり行うことが非常に重要です。また、化学療法後の残存腫瘍に対して残存腫瘍切除術をおこなうことがあります。(図4)

図4

生存率

適切な診断・治療をすれば早期症例で90%以上、難治症例でも70%以上で治癒が期待できます。治療後も定期的な通院・再発チェックの検査が重要です。また、反対側の精巣に再発することがありますので自分で触診することも必要です。

 

参考資料

・国立がん研究センターがん情報サービス、がんの統計2022