過活動膀胱

過活動膀胱とは

過活動膀胱とは,頻尿や夜間頻尿に尿意切迫感を伴った状態のことを言います。尿意切迫感とは「急に起こる、我慢できないような強い尿意」のことです。尿意切迫感を伴わない場合には、過活動膀胱とは言えません。過活動膀胱は単独の病気(病名)ではなく、さまざまな原因から生じる共通の症状のことを指します(症状症候群)

症状

尿意切迫感が必須の症状です。それ以外に頻尿・夜間頻尿・切迫性尿失禁などの症状を併せ持つ症状症候群です。膀胱充満時の違和感や尿意を早く感じてしまうような症状を伴うこともあります。

症状の程度を評価するために、過活動膀胱症状質問票が用いられます。

過活動膀胱症状質問票 (Overactive Bladder Symptom Score;OABSS)

以下の症状がどれくらいの頻度でありましたか。この1週間のあなたの状態にもっとも近いものを、ひとつだけ選んで、点数の数字を○で囲んで下さい。

質 問 症 状 点数 頻 度
1 朝起きた時から寝るまでに、何回くらい尿をしましたか 0 7回以下
1 8〜14回
2 15回以上
2 夜寝てから朝起きるまでに、何回くらい尿をするために起きましたか 0 0回
1 1回
2 2回
3 3回以上
3 急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがありましたか 0 なし
1 週に1回より少ない
2 週に1回以上
3 1日1回くらい
4 1日2〜4回
5 1日5回以上
4 急に尿がしたくなり、我慢できずに尿をもらすことがありましたか 0 なし
1 週に1回より少ない
2 週に1回以上
3 1日1回くらい
4 1日2〜4回
5 1日5回以上
合計点数

過活動膀胱の診断基準

尿意切迫感スコア(質問3)が2点以上かつOABSS合計スコアが3点以上

過活動膀胱の重症度判定
OABSS合計スコア 軽症 :5点以下、中等症 :6〜11点、重症 :12点以上

 

検査

過活動膀胱と鑑別すべき疾患としては,膀胱の異常(膀胱癌,膀胱結石,間質性膀胱炎・膀胱痛症候群),膀胱周囲の異常(子宮内膜症など),前立腺・尿道の病気(前立腺癌,慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群,尿道結石),尿路感染症(急性細菌性膀胱炎,尿道炎,急性細菌性前立腺炎,慢性細菌性前立腺炎など),その他,尿閉,多尿,心因 性頻尿,薬剤の副作用などがあります。以下の検査を行うことでこれらの疾患を除外し、過活動膀胱の診断を行います。

  • 尿検査、尿培養検査
  • 残尿測定
  • 排尿日誌
  • 超音波検査
  • 前立腺特異抗原(PSA) 男性のみ
  • 必要があれば尿流動態検査、膀胱鏡、CT、MRIなども行います。

治療

行動療法

  • 生活指導:減量,運動,禁煙,食事・飲水指導,カフェイン摂取制限などがあります。
  • 膀胱訓練:排尿を我慢することで、尿を貯めやすくします。
  • 骨盤底筋訓練:肛門を絞める体操で骨盤底筋を鍛えます。切迫感を伴う失禁に効果があります。

薬物療法

  • β3アドレナリン受容体作動薬(β3受容体作動薬) :膀胱の筋肉を弛緩させて膀胱容量を増やします。副作用の少ない薬です。
  • 抗コリン薬:切迫感を和らげ、排尿間隔を伸ばします。口渇・便秘・排尿困難などの副作用を生じる場合があります。

 

難治性過活動膀胱

行動療法と薬物療法を3ヶ月以上継続しても症状が改善しない場合を難治性過活動膀胱と言います。

その場合には、ボツリヌス毒素膀胱内注入療法、仙骨神経刺激療法,その他の神経変調療法などを検討します。前立腺肥大症を有する男性では前立腺肥大症に対する外科的治療が,骨盤臓器脱を有する女性では骨盤臓器脱に対する治療が過活動膀胱に奏効する可能性があります。

 

参考資料

・過活動膀胱診療ガイドライン 第3版